◇何をするにせよ代表者は一人にすべし


こんにちは。
日中はまだ蒸し暑さに体がへたばりますが、朝晩は過ごしやすくなりましたね。
おかげで飼い猫も活発になり、遊び相手を務めるのが大変です。


さて、紹介が少し遅くなりましたが、寄稿記事が公開されておりますので、まだお読みいただいてない方はどうぞ。

こちらから→「共同経営者の会社は必ず潰れる」そう私に教えてくれた、思い出深い恩人の想い出


東京オリンピック前の話です。あの頃はインバウンドに大きな期待がありました。
これからは地方にも外国人観光客がどしどしやってくるから、観光に大きなビジネスチャンスありだと唾を飛ばす人が大勢おりました。

疫病の世界的流行によって無観客のオリンピックになるなんて、誰も予想してませんでしたし…。



オリンピックだけではありません。私の地元である高知県では、丁度このころ外国の豪華客船が港に立ち寄るようになったことも、インバウンド熱が高まった要因でした。県を上げて外国人観光客をもてなそうと、予算をつけて歓迎イベントをしたり送迎バスを運行したりしていましたからね。
そんな空気の中で、私が関わった活動も発足したのです。


私たちは4人とも、進学や就職で地元を離れたUターン組でした。だからこそ、あの時点では色々と分かっていなかったし、何も見えていなかったのでしょう。

そもそも需要がないことや、地元の方々も求めていないことを、「こんな企画をすれば観光客にウケるはず!」「地元の人たちも喜んでくれるはず!」「こういうことはスピード感が大事だよね!」と独断専行で突き進んでいきました。
それでも、言い出しっぺが責任を持って自ら動いていれば、あそこまでの苦情は出なかったでしょう。


けれど実際には、ボランティアで協力を申し出てくれた地元の方々に、イベント開催のための面倒な手間とコストの大部分を押し付けていたのですから、怒られて当然です。

なんやかやと周りに押し付けた挙句に、ターゲットであるはずの外国人観光客は一人も集客できず、2回ほど企画したイベントは大失敗に終わります。
しかも、代表者が3人も居るため責任の所在もあいまいになってしまい、誰も方向性の間違いと失敗の責任を取りません。


この時期、私は外を歩けば必ずと言っていいほど誰かしらに捕まって苦情を言われたり、苦言を呈される日々を送っておりました。迷惑をかけてしまったみなさんが仰ることもお怒りもごもっともでしたので、「申し訳ないです」としか言えません。


例え活動の進め方に問題があっても、活動内容にさえ需要があれば、もう少し結果は違っていたと思います。けれど、周りを巻き込んでおきながら需要が無いことをしていたのですから、申し開きができません。


イベントの開催日には、豪華客船から降りて市街地を観光する外国人観光客のために、「高知の市街地や飲食店を案内するおもてなしスタッフ」を配置していました。こちらとしては親切のつもりです。

けれど、
ご夫婦で市街地を散策しておられた高齢の白人男性に、スタッフたちが

「いい加減にしろ!うっとおしく付きまとうんじゃねえよ!ついてくんなっつってんのが分からねえのか!」

と、英語で怒鳴りつけられている場面を目撃してしまいました。


そもそも今の時代において、「おもてなし」の押し付けは肝心の旅行者にとっても迷惑でしかないのかもしれません。個人個人が思うままに行動するのが現代の旅行スタイルなのですから。
彼らが助けを求めている時に「大丈夫ですか?」と声をかけるのは喜ばれるでしょうが、頼まれてもいないのに勝手に世話を焼こうとするのは、自由時間を楽しんでいる旅行者を苛立たせるだけなのでしょう。


豪華客船の観光客には、ほんの数時間しか高知での自由時間がありません。
それなら国の重要文化財である高知城に上って、人気スポットのひろめ市場で飲み食いすれば、十分に異国情緒が味わえますよね。
たった数時間の滞在時間しかないのに、お金のかかるオプショナルツアーやイベントに、わざわざお金を払って参加したい人はいなかったのです。


活動にまるで需要がないことは実際に失敗をしてみて分かりましたが、プレスリリースに目を通して、


「こんなのビジネスになるはずない。お話にならない」

「例え非営利で活動するにせよ、代表者が複数人いる時点で失敗してる」


と、はっきりダメ出ししてくれたのは、クラウドワークス株式会社・代表取締役社長の吉田浩一郎さんだけです。
そうです。この記事中のY氏とは、吉田さんのことです。とても気さくな方でした。
シビアかつ的確なアドバイスに感謝しております。


それまでは、代表である3人が高知県のインバウンド担当者や、県が依頼している東京のお偉いらしいコンサル先生に企画書を見せても、適当なことしか言われていませんでした。
特に、元リクルート出身だという東京のコンサル先生は適当でした。問題点を指摘せず、具体的なアドバイスも何一つせず、


「私にはどうすべきかちゃんと分かっているのよ。でも、ほら。私が答えを教えてしまうと、あなたたちが成長しないでしょ。
どうすればこの事業が軌道に乗るのか、あなた方が自分達で考えることに意味があるの」


とか言って、誤魔化されて終わり。
あんな人に税金(県の予算)を吸われているのですよね。
キラキラ起業コンサルと変わらねぇレベルのくそアドバイスで、コンサル料を数万円も取るのですからふざけています。
酒の席で隣に座ったからとはいえ、吉田社長は快く無料で相談に乗ってくれました。


ちなみに、当時はまだ胡散臭いやつだと分かっていなかったイケハヤにもプレスリリースを見てもらいましたが、彼からも

「おー。面白そうなことしてますねー。いい感じになったら連絡くださいね。取材に行きますから」

としか言われませんでした。
事業の相談って、虚業家やコンサルタントにするものじゃないんだなということを学ばせて頂きました。


そういったことも全て含めて、色々と勉強になりました。
これのせいでお互いに嫌な思いをし、縁が切れてしまった人たちも居るけれど、あの活動に関わったからこそご縁ができた人も居て、そのおかげで今があるので、とても良い経験をさせてもらったと思うことにしています。


ことわざにも、

「船頭多くして船山に上る」

とありますよね。本当にそうなのですね。

私のような凡人は、実際に自分で経験してみないことには古くから伝わる戒めの意味も学べないのですが、私の経験がみなさんにとって他山の石となれば幸いです。