◇供養するのが男の義務


こんにちは。
昨日からめちゃめちゃ雨が降っております。今年は雨が降り過ぎですね。


さて、マイナビバイトさんに寄稿した記事が公開されましたので、まだお読みでない方はどうぞ。

こちらから→アルバイトから社長になった私の友人は、何が人生の転機になったのか


この記事は、8月中旬に公開されるかと踏んでお盆に絡めて書いたのですが、9月になっちゃいました。ちょっと読みが外れましたね。

今回の記事の主役である幼馴染の圭一くんは、これまでにもちょくちょく登場しています。
なぜ頻出するかと言うと、彼の話が面白いからです。


こうやって文章にしてもやっぱり魅力的な人物なのですが、会って話をしていても面白いんですよ。
友人知人で中小企業の社長業をしている男たちは他にも数名いるけれど、他はみんなジュニアなのです。もちろん2代目、3代目にも様々な苦労があると思うのですが、やっぱりボンボンよりも叩き上げの人の方が引き出しが多いですよね。

まあ、それは単に私の好みかも。
私は自分がお嬢さん育ちなもので、雑草タイプの人間には宿命的に惹かれるのです。自分に無いものを求めているのでしょうね。
圭一くんとは45年の人生でかれこれ40年ほどの付き合いですが、いつ会っても(と言ってもたまーにしか会わないけど)面白いなと思います。


そして、奥さんとか彼女は大変だろうな。自分がこの人のパートナーになることがなくて良かった。

とも、思ってます。

だって、こんな男にマジ惚れしちゃって、うっかりパートナーに収まっちゃったら孤独と苦労しか待ってないでしょ。


圭一くんは幼少期からやんちゃで、ハンサムではないのに誰からも愛される才能を備えており、人気者でした。女の子にもモテまくっておりました。
そんな彼の信条は、「友達を大切にする」です。男同士の付き合いが何よりも大切なので、彼女が一番になったり、家庭が最優先になるような人ではありません。
恋にのめり込んだり、愛に生きることは絶対にしないタイプです。


だからこそ、自分は成功できたのだと言っております。
私が見ている限りでも、彼は学生時代には友人、働き始めてからは仕事仲間との繋がりを何よりも大切にし、誰にでも分け隔てない態度で接して、ダメな人間のことも面白がり、決してバカにしたり恫喝したりしません。だからどんどん人が集まるし、彼について行くのでしょう。
人たらしです。


あとは、賭け事と勝負事が好きなところが、事業に向いていたのかも。昔はパチンコと賭け麻雀ばっかりしてましたから。
今はわき目もふらず働いていて、何より仕事が楽しいと言ってますが、きっとゲーム感覚なのだろうなと思います。


そんな圭一くんも、10代のほとんどと20代の10年間はまるっと遊びに費やしました。
大学生活は大いに遊び、何軒かの投資用マンションを購入するために1年間だけ就職し、守備よくローンを組んで物件を手に入れたらさっさと辞める。

「俺って賢い!自由は最強!サラリーマンやってる奴らはバカ!」

だと思っていたそうです。
イケハヤが社畜をバカにし始める10年も前に、脱社畜の生き方を実践していたわけですね。


元カノさんは、さぞかしイライラハラハラしていただろうなと思います。

「その彼女がさ、どういうつもりか知らないけど、俺んちに入り浸ってた俺のツレと付き合い始めてしまったんだよ」


露悪的な表現がマイナビさんにはそぐわなかったせいか、公開された記事では「付き合い始めた」と書き換えられていましたが、元カノさんは家に出入りしていた圭一の友達と付き合い始めたのではなく、一発ヤっちゃったのです。

そんなのは、女目線で考えるとどう考えても当てつけであり、ほんの出来心、ちょっとした気の迷いですよね。
10代から彼に恋していて、20代の全てを彼に捧げたのに、いつ報われるのか先が見えない。
愛することと待つことにすっかり疲れた元カノさんの当時のストレスがどれほど強く大きなものだったのか、本人に話を聞いてみたいくらいです。


でも、男には分からないのでしょうね。
若さを失いつつある女の焦燥と、長期間付き合った適齢期の女を捨てることの残酷さと、その罪の深さが。

彼が、「俺は結婚するから家を出る」と告げた時、流血沙汰の愁嘆場となってもおかしくなかったと思いますよ。
刺されずに済んだのは、破局後も同居を続け、元カノさんに寄り添い続けた圭一のお母さんのおかげでしょう。ママに感謝しなくっちゃ。

入籍こそしていなかったけれど、彼女のことを嫁と思って、どうしようもない息子が迷惑と苦労をかけたと哀れんだのでしょうね。


結果的に、彼女の過ちが圭一を更生させました。
30歳を過ぎる頃にはいいかげん自由に飽き、遊びにも倦んでいたとはいえ、「彼女が居座って出て行かない家に帰りたくない」という強い思いが、働くことから逃げていた彼に就職という道を選ばせ、仕事に駆り立てたのです。


働き始めた彼が順調に出世したのは、彼自身の才覚と努力によるものです。
30歳を過ぎてから働き始めて、無知や経験の浅さをバカにされても、彼は腹をてて辞めたりせずに、じっと耐えて独力で知識をつけ、コツコツと経験を積みました。
弱い人間ほどすぐに怒って放り出したり、心が折れたと言って逃げ出しますよね。

「今時石の上にも3年は古い」と言われますけど、やはり辛い時間に耐えてチャンスを待つことのできる人間であるかどうかが、成否を分けるのではないかと彼を見ていて思うのです。


耐えて努力した圭一のことは、偉いと思う。立派だと思う。

けれど、何の不足もない男盛りを迎え、いよいよ精力あふれる彼の人生の影には、報われなかった愛に泣いた女の青春の屍が横たわっている。
私は、それに労りの土をかけ、そっと手を合わせたくなります。

だから、

「お盆と思って、供養してあげてよ」

と言いました。


きっと、元カノさんだって納得はしているはずで、今更やけぼっくいに火がつくことを期待するほどあさましい人ではないはず。
けれど、彼女は他の誰かを彼以上に人生かけて愛せるほど器用ではないし、恋し愛した記憶と青春の思い出だけを胸に生きていけるほど強くもないのでしょう。


年に一度は青春の亡霊を迎え入れ、その恨みつらみに耳を傾けるくらいのことは、したっていいじゃないの。
女の情念がいつか成仏して消えるその日まで、供養を続けて欲しいですね。