◇痛いのはお金より恥


おはようございます。
寄稿記事が公開されております。まだお読みいただいてない方はどうぞ。

こちらから→都会の有名大から地方のFラン大に流れた大学教授の話〜古くて新しい仕事〜


今回は私がこうしてものを書くきっかけとなった出来事の顛末について書きました。

田嶋(仮名)とはセミナーで知り合い、彼の研究テーマが地方創生だということで親しくなりました。
私は丁度その頃政府から地方創生の助成金をもらった高知市内のシャッター商店街と組んで、定期的にハンドメイドマルシェを開催しようとしていましたから。

彼はクズでしたが立派な肩書きに目が眩み、私がしようとしていることに協力してくれる力強い助っ人だと思ってしまったのです。




一度だけ開催できた商店街でのハンドメイドマルシェには、「カメラマンを連れて取材に行くから」と言われていたのに、迎えに行ったら田嶋一人。

「あら?カメラマンの◯◯さんは?一緒に来ると言ってたでしょ?」

と聞いたところ、へらへらしながら

「さあ、知らない。都合が悪くなったんじゃないの?」

というふざけた返事。
後に、私は自分でそのカメラマンの方に「どうして来なかったのか」と問い合わせをしてみました。
すると、はっきりした事は教えてくれませんでしたが、雰囲気から察するに、彼はこれまでにも数度田島の取材に同行してカメラを回したものの、その経費とギャラについて交渉しようとしたら、田島は一切の連絡を無視して音信不通になってしまったようでした。

結局田嶋は自分でカメラを構えることもなく、マルシェの取材も商店街の取材もほとんどせずに帰って行きました。一応高知まで来てはみたものの、すでに彼の中で私のマルシェは関心が低く優先順位も低くなっていたからでしょう。

彼は借金返済のため、何らかの成功で名をあげようと焦っており、一つのテーマに腰を据えて取り組むのではなく、幾つもの企画や研究を同時進行で手がけていました。
その中の一つに、彼の勤め先の学生を起用した「ご当地アイドルのプロデュース」があったのです。彼はこの手垢にまみれた企画に最も期待をかけてコミットしていましたが、結局これが彼の命取りとなり、女の子たちの扱いに失敗してセクハラを訴えられ、失職しました。


こうして書いてみると清々しいほどのクズに引っかかって利用されましたね。
「田島には気を付けろ。あの男には礼節の心がなく、他人を利用することしか考えていない」
と、彼の正体をすぐに見抜いて私に忠告をくださった人生の大先輩も居たんですよ。でも、分からなかった。


貧すれば鈍するとはこのことです。
私もシングルマザーとして早く身を立てなくてはならない。その為に早く結果を出したいと焦ったあまり、高額セミナーのカモになりお金を吸われ、セミナーで知り合ったカモ仲間(田嶋)に労力を吸われました。

まあ、でも、これも「洗礼」ですね。
人生の中で洗礼を受ける経験はこれまでにも度々ありました。

高知みたいな田舎から東京へ出て洗礼を受け、平和な日本から単身ロンドンに渡り洗礼を受け、社宅に入りお局さまの洗礼を受け、守られていた結婚生活からシングルマザーになって冷たい世間の洗礼を受け、雇われて働いた経験しかなかったのが自営業にチャレンジして洗礼を受け、そうやっていくつもの洗礼を経て煮ても焼いても食えない女として磨き上がっていくのです。
今じゃすっかり黒光りしてますよw


洗礼の経費というか、社会勉強代として最もかかるコストって「お金」よりも「恥」なんじゃないかと思います。
「引っかかった」「騙された」と分かった時って、恥の意識がそれを認めるのを拒むんですよね。
失ったお金も惜しいけれど、自分が格好悪くて、恥ずかしくていたたまれない。

不誠実な人間に騙されたりカモられた時、己の過ちをすぐさま認められる人は案外少ないです。
「なんだかおかしい」と薄々気づいていても、自分のプライドや立場を守ろうとして冷静で正しい現実認識を拒む人の方が多いのですよ。
己の現実と恥に耐えることよりも、目をつぶってカモられ続けるという破綻の道を選んだり、仲間を増やして安心しようと詐欺の片棒を担ぎさえするのですから人間は難しい。
詐欺師はその心理を利用しています。

幸にして、私は自分のバカさや情けなさを認めることが出来ました。
そして、こうしてネタにして回収しています。


結果論ではありますが、私の場合は騙されようが利用されようが、「人のために文章を書く」と言う経験が、書く練習になりましたので損はしていません。
他人のために書いた文章でお金をもらえる事はなかったけれど、褒めてはもらえ自信がつきました。
私の書いた文章の反響を見る事で、「刺さる文章」のコツも掴んでいきました。

そうこうするうち私の文章力を認めてくれる夫と出会い、再婚し、彼の支え(原稿はほとんど一人で書いてますが、夫の意見が入ったり夫の手が入っているものもあります)によって書き続けています。
そう考えると損したどころか大分儲けましたね。


しかし、いくら勉強になるとはいえ、詐欺師にはそうそう関わるものじゃありません。
人生というのは基本的に「嘘をつかなくてもいい。裏切りを心配しなくていい。一方的でなく、お互い同じように相手を思い合える人」と付き合うべきです。

そういう「信じることのできる人」の仲間になるには、自分も「信用されるに足る人」にならないといけませんよね。
他人に信用してもらえるかどうかは「生き方」や「生き様」にかかっています。


ごく普通の人でもSNSで自分を盛ったり偽ったり、実績を大きく見せようとする嘘つきが多い今の世の中で、島田潤一郎さんの仕事に対する考え方や生き方には大いに共感します。
この本はいつまでも大切に持っておきたい一冊です。


古くてあたらしい仕事
島田 潤一郎
新潮社
2019-11-27



島田さんが好きなので、今までにもう三度も彼のトークイベントに足を運びました。
コロナが収まったら、またお会いしたいです。