◇そっとしておいて下さい


こんにちは。
非常事態が日常になりつつありますね。


そんな中、年明けに書いた記事がようやく公開されました。

こちらからどうぞ→底辺に生まれたアーティストの物語〜聖書〜


こちらの記事は評判もよく、読者の方からは「ヒロさんの絵を見たい」というお声をいただいております。
そこで、ご本人に打診をしてみましたが、よいお返事は頂けませんでしたので、残念ですが彼の身元を明かすことも作品の紹介もできません。申し訳ありません。

記事による身バレを避けるため、ヒロという名前はもちろん仮名です。彼は現在イギリスでアーティストとして高く評価されていますが、その作品は「絵画」でもありません。
わざとフィクションを交えて書きました。


彼は現在、素晴らしい家族とよき理解者に囲まれ、美しい作品を世に生み出しながら静かに暮らしています。私の書いた記事には、彼の生い立ちに関わるデリケートな問題が含まれていますので、私が勝手にモデルとなったヒロさんの正体を明かし、彼の生活と活動を乱すことはできません。
どうぞご理解ください。


それでも、ヒロさんの話はいつか世に出したかったので、書きました。
人生にはとても印象深い人との出会いや、思いがけず大きな影響を受ける出来事があります。私にとってヒロさんは「忘れられない人」の一人でした。


原稿は「3000字の読み切り」として書かねばならないため、
(毎回文字数オーバーで4000字近くになってますが)思い出のなかのエピソードも字数も削りに削ってあります。
例えば、冒頭に出てくるソヨン(仮名)さんも面白い人でした。

彼女は口の悪さが災いして、実は使用期間の終了と共にクビになってしまったので、3ヶ月しか一緒に働いていません。

私はソヨンさんを面白い人だと思っていましたが、オフィスの他の同僚は彼女が嫌いでした。「協調性がない」という理由で、彼女は使用期間が終了すると採用を見送られたのですが、その時のエピソードは今でもケッサクだと思っています。


日本から来ていた当時のマネージャーは、お酒の席で酔っぱらうと全裸になる人でした。ある日、日本人パートタイマーの一人が主催したホームパーティの席でも全裸になって醜態を晒し、入社したばかりのソヨンさんもその場に居たのです。

ですから、面接の会場となったビジネスクラスラウンジで、マネージャーから「君は人間性に問題があるから本採用はできない」とクビを言い渡された時、ソヨンさんはマネージャーの股間に目を落とし、



「はぁ?あんたに言われたくないね。私はあんたがどんなにチンコのちっちゃい男かってのを知ってるんだよ!」


と言い放って出て行ったそうです。もちろんマネージャーは顔を真っ赤にして怒り狂ったそうですが、その場にいた他のスタッフはみな忍び笑いをしてたそう。

お酒が入ると全裸になるマネージャーを、みんな影では「みっともない人」だと言い合っていたけれど、自分を評価する上司ですから本人に面と向かって何か言ったりはしませんからね。
クビになった腹いせとはいえ、ソヨンさんは強くてかっこいいなと思ったものです。


ちゃんと挨拶もできないままでソヨンさんは辞め、ほどなくしてヒロさんも辞めていかれましたので、3人で一緒に帰ることができたのは短い期間でした。
ヒロさんとお茶を飲んだのも、一回だけです。
私はロンドンにいる間、多くの男性からお茶やお食事をご馳走になりました。けれどその中で、ヒロさんに奢ってもらった1杯のコーヒーが、他の全てに勝る思い出です。