■だから着物

ちょきちょきちょきちょき。
着物をほどいているのです。

いえね、実家の和ダンスに祖母のお古の結城紬(ゆうきつむぎ)が眠っていたのですが、それを引き取ったのです。

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袷(あわせ)の着物だったのだけど紬は単(ひとえ)がいいなと思い、仕立て直しに出そうかと思って、思い直しました。

仕立て直すためにお店へ出すんじゃ無くて、いっそ自分で仕立ててみたいなと。 

そこで和裁を教えてくれる教室を調べて通うことにしました。先生に「着物をほどくのも勉強になるから一度自分でほどいてごらん」と言われ、ちょきちょきちょきちょきハサミで糸を切っているのです。


最初この着物を見た時色と柄が好きじゃ無いと思ったけど、今や伝統工芸品として名高い結城紬なんて自分じゃ絶対買えません。 
このままタンスの肥やしにしておくのももったいない。


赤紫のような茶色のような不思議な色合い。少し前まではババくさいと思っていたけど、この着物に限らずちょっと前まで「こんなのおばちゃんぽい。私にはまだ早いわよ」と思っていた色柄が、ふと鏡を見ながら当ててみるとしっくり似合ってる。

逆に「私にはこういうのが似合うのよね。この色が顔映りがいいのよ」と思っていた色柄が、久しぶりに着てみると全然似合わないのはどういうこと?

落ち着いたピンクの着物は30代半ばまではよく似合っていた。明るい赤色の着物は顔色が良く見えて一番私が綺麗に見えた。30代まではそのはずだった…。


今ではグレーがかった紫とか、落ち着いた緑や深い藍色、赤は赤でも渋い小豆色が似合ってる。
「ちょっと色も柄もオトナ過ぎてシブイんですけど」くらいの着物を着た方が、逆に顔や全体の印象が若々しい。

そして誰がなんと言おうとほんのちょっと前までは似合っていたはずの華やいだ着物を着るとどうにもイタイタしくて鏡の自分を見てられない。あぁ。。。
 

同級生の友達とおしゃべりしてて、「最近着物が以前よりいっそう好きになり着るようになった」と言うと、「なぜあんな面倒で苦しいものを」と言われるけれど、私は苦しいのが嫌いでちゃんと着つけていないからけっこう楽なのだよ。
嘘つき袖を着物にくっつけて長襦袢は着ないし、腰紐はゴムタイプのを一本しか締めない。帯結びは面倒なので全部作り帯にして帯板も省略している。いーの適当で。


ああ、話がずれました。

「なんで着物なんか」と言われて、「いやーだって、歳をとればとるほど似合う洋服がなくなってきてねぇ。買い物ができるお店もどんどん減っているんだよ」
と言うと、「わかるー!!!」と言われる。同級生は一緒に歳をとっていくから分かるよね。みんな仲良く41歳だもん。


30歳を過ぎた頃に気づいたのだけど、世の中の素敵な洋服とお店のほとんどは若い子向けなんですよね。
若い頃の私は洋服を着るのが本当に好きで着道楽でした。若い私には似合う洋服がいっぱいあったもの。

だけど年齢を重ねると肩の出た服なんて寒くて着られない。胸元は開きすぎると肌の衰えが目立つ。お腹周りは隠したいし、膝の出るスカートなんてとんでもない。あぁ、楽しくない。。。


だからここぞという時には洋服ではなくて着物を着るのです。着物だと衰えて人様にお見せするには不都合になってきた体もほとんど隠れるし、きちんとしてるようにも女らしくも見えるから中年女にゃ好都合。


それにしても紬ってすごいよなぁと思います。売り物にならないクズを集めて糸を紡いで染めて織って、昔は日本人の庶民の女性たちの労働力がほとんどタダみたいな値段だったからできたんでしょうね。
今では手間暇がやたらとかかる紬は高級品で買えません。

だからといって女性が労働力をタダみたいな値段で搾取されてた時代が良かったとはもちろん思わないけれど、こういう「手作りの品」って手に入らなくなりやがては作られなくなっていくんでしょうね。