私がアメリカのハンドクラフトサイトEtsy(エッツィー)について知ったのは、この本からでした。

エミリー マッチャー 文藝春秋 2014-02-24
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by ヨメレバ


私が持っている初版本の発売日が2014年2月25日となっていますから、およそ発売されて2年ですね。

おおざっぱに説明すると、日本でも数年前から若い女の子達の専業主婦思考が取りざたされていますが、不況が長引くアメリカでは、女性をとりまく劣悪な労働環境(大学を卒業しても職に就けない、就職しても産休育休無し、私生活を犠牲にして働いても昇格昇給の見込み無し)に嫌気がさした20代〜30代の女性の間で主婦回帰の流れが起きている、という内容の本です。

詳しくはこちらの記事をどうぞ→子育て世代の専業主婦思考
 

この本の中で私が注目したのは第4章「編んで稼ぐー起業家への道」です。

この章ではハンドメイド製品販売サイトの草分けであるエッツィーと、手づくりビジネスに夢を見る女性(主婦とは限らない)について言及してあります。
私は一昨年この本を読んで、日本でも同じことが起こるだろうとは当時から予感していました。アメリカやヨーロッパで起こるムーブメントはいつだって、周回遅れで日本にやってくるからです。


私はハンドメイド作家の皆さんに、「予言の書」としてこの本を一読されることをお薦めいたします。


私はまずこの本をKindleで読み、面白かったので紙でも買い直しました。
以下、私が紙の本に蛍光ペンでラインを引いた箇所を一部抜粋して書き出します。文章は大部分を省略しながら、省略を補う為に部分的に書き換えますので、原文のままの紹介ではありません。

今の日本のハンドメイド界で起こっている事を頭に思い浮かべながら、エッツィーをminneと置き換えて読んで下さい。

では、どうぞ。


子供の居る主婦にとって、家でできて、時間的に融通のきく手づくりビジネスほどありがたいものはない。
主婦ブログと同じように、それもまた家庭を大切にしながら、趣味で稼げる夢の仕事なのだ。インターネットのおかげで、パソコンとカメラさえあれば、家に居ながらにして、誰でも商売ができるようになった。だからこそ、ネットショップで手づくり品を売っているのは、圧倒的に女性が多い。

たしかに、手づくり品のビジネスならば、ママ起業家が活躍できそうだ。
子育てしながらビジネスを始めるママ起業家は昔からいた。といっても、昔は化粧品販売が主流だった。

だけど、インターネットで商売ができるようになって、ママができるビジネスの幅が広がった。これまでの外で働くお母さんや、たまたま子供が居た女性起業家とちがって、現代のママ起業家が目指しているのは家庭や育児に密着したビジネスだ。

とはいえ、ママ起業家がもてはやされていても、その実態はたいてい低収入で、ごくごく小さな商売をするだけだ。さらに、そんなママ起業家を狙う腹黒い輩も現れた。無防備な母親を狙って、「自宅で子育てしながらお金が稼げますよ。」と甘言で釣る詐欺が横行しているのだ。

もし、あなたが新たな手づくりビジネスの波に乗って、生計を立てたいと野心を抱いているのなら、前途多難だと覚悟しておいた方がいい。まずはいったん立ち止まって、じっくり考えてみよう。商売仇(しょうばいがたき)がこの世にどれくらいいるかを


一見先行き明るいように見える手づくりビジネスにも、根本的な問題がある。手づくりの品物を売っていても、そう簡単には儲からないことだ。ハンドメイドのものに注目する人がこれだけ増えて、手づくりビジネスがこれだけ急成長しているからには、いずれははじけるバブル経済かもしれないのだ。 
昔から手工芸で生計を立てて来た人たちは、今回の手づくり経済が永遠に続くとは思っていない。
 
グレース・ドゥブッシュは手づくりビジネスで成功する為のハウツー本を出しているが、エッツィーでお気軽にビジネスを始めるのは考え直した方がいいと話す。
「エッツィーには、仕事を辞めて手づくりで金持ちになりましょうという考え方がはびこっているの。でも、実際にはあそこはまともな商売ができる場所じゃない」
なぜなら、安いクズが無数に出品されていて、職人技の手づくり品が埋もれてしまうからだそうだ。


手づくりビジネスの情報サイトを主催するミーガン・オーマンは、手づくりブームのせいで非現実的な妄想を抱く人が増えていると指摘する。
「すべてを手に入れられるという幻想。社長になって、お金が稼げて、子供と一緒に居られて、毎晩きちんと食事が作れるなんて、幻想でしかない。趣味ビジネスというあいまいなものに期待している人が多過ぎる。とにかくはじめてみればいい、家でできるんだから、と分かっているのはそれだけで、趣味をきちんとしたビジネスにするにはどうしたらいいのか、まったくわかっていない。
手づくりビジネスにエッツィーは一役買ったけれど、同時に、手づくりのものの値段をとんでもなく引き下げることにもなった。
 
「エッツィーがフクロウのマグカップを売り出すと同時に、手づくり愛好家はハンドメイドの品物がこの世の誰にとっても貴重なものになったと勘違いしはじめた」と書いているのは、エッツィーをからかう大人気サイト〈レグレッツィー〉の管理人だ。
「知ってる?それだけじゃないってこと。
誰かが手づくりしたものなら、せいぜい3ドルがいいところと、大抵の客は思ってる。とくに特別なものでもなければ、そう考える。素人がどうでもいいようなものを山ほど作るから、エッツィーにはクズがあふれかえっている。客が欲しがるのは安いクズの方で、エッツィーはそういう人からお金を巻きあげてるってわけ」 

 

最後に、今日本で過熱気味の「ハンドメイドで金儲けブーム」に対する私の気持ちの代弁として、この本から以下の文を引用させて頂きたい。

女性に活力を与えるはずの手づくりビジネスが、いつのまにか、低賃金の女性専用の産業になっているとしたら、あまりにも悲し過ぎる。


エミリー マッチャー 文藝春秋 2014-02-24
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